こんにちはたま助です。
全国の言語聴覚士(ST)の皆さん、そしてご自宅でご家族を介護されている皆さん、毎日お疲れ様です。
前回の記事では、記憶力そのものよりも**「自分の記憶力を客観的に把握する力(=メタ記憶)」**が、安全な日常生活を送る上で非常に重要だというお話をしました。 「自分は忘れていない」「メモなんかなくても大丈夫」という過信(病識の低下)があると、いくら周りがメモ帳やカレンダーを勧めても、絶対に意地になって使ってくれませんよね。
しかし、実際の臨床現場やご自宅で「メタ記憶」を鍛えようと思っても、「ちょうどいい難易度で、かつ自己評価を促す教材」がなかなか存在しないのが実情です。
そこで今回、現場のSTとしての視点と臨床的根拠を詰め込んだ**「お買い物メタ記憶訓練アプリ」**を独自に開発し、無料で公開することにしました!スマートフォンやタブレットがあれば、面倒なインストール不要で今すぐブラウザ上で使えます。



なぜ記憶力より「メタ記憶」が大切なのか?(メモを使わない問題)
世の中には「脳トレ」と呼ばれる記憶力ゲームが星の数ほどありますが、このアプリの目的は「記憶力を上げること」ではありません。 **「自分の記憶の限界に、自分自身で気づくこと(アウェアネスの向上)」**を最大の目的として設計しています。
脳卒中後の高次脳機能障害や、軽度認知障害(MCI)の方にとって一番危険なのは、「忘れていることに気づいていない状態」です。このアプリを通じて「あれ?自分は完璧だと思っていたのに、意外と忘れてしまうんだな」という健全な『記憶のズレ』に気づくことが、メモなどの代償手段(お助けツール)を受け入れるための第一歩になります。
単なる脳トレとは違う!メタ記憶を鍛える3つの独自ステップ
その「気づき」を生み出すために、アプリ内には以下の独自のステップを組み込みました。
- ステップ1:「何個覚えられそうか?」を自ら予測する(モニタリング) 5つのお買い物アイテム(画像)を一定時間見つめてもらった後、すぐにテストはしません。**「今の5つのうち、自分は何個正解できる自信がありますか?」**と、ご本人に予測を入力してもらいます。この「自分の能力を推測する」という作業こそが、前頭葉のメタ記憶(監視レベル)を強烈に刺激する最も重要なプロセスです。
- ステップ2:本格的な「妨害課題」を挟んだ遅延再生 実際のスーパーでの買い物では、「牛乳を買おう」と思ってから売り場に着くまでに、「あ、特売品だ」「知り合いに会った」といった様々な出来事(妨害)がありますよね。 このアプリではより実践的な訓練にするため、記憶を保持したまま「計算問題」「迷路」「ストループ課題」などのランダムな**妨害課題(干渉)**をこなしていただき、その後にテスト(遅延再生)を行います。
- ステップ3:予測と結果の「ズレ」を視覚化するフィードバック テスト終了後、「何個正解だったか」に加えて、**「自分の事前の予測と、実際の正解数にどれくらいズレがあったか」**が画面に大きく視覚化されて表示されます。
【STからの絶対のお願い】点数が低くても「怒らないで」
ご家族やセラピストの方がこのアプリを使う際、絶対に守っていただきたいルールが1つあります。それは、**「点数が低かったり、予測が外れたりしても、絶対に指摘して怒らない」**ということです。
目的は高得点を取ることではなく、ご本人が画面を見て「あれ? 5個全部覚えたつもりだったのに、実際は3個しか選べなかったな」という自己への気づきを得ることです。ここで「ほら!お母さんやっぱり忘れてるじゃない!」と指摘してしまうと、プライドが傷つき「こんなゲーム面白くない!」と二度とやってくれなくなります。
- ◎ 良い声かけの例: 「予想より少し難しかったですね。途中で迷路をやったから忘れちゃったのかもしれませんね」
- ◎ 次のステップへの誘導: 「これくらい忘れてしまうことがあるなら、次から本当のお買い物に行く時は、念のためメモ紙を持っていった方が安心かもしれませんね」
このように、予測と結果のズレを一緒に眺めながら、**「じゃあどうやって対策しようか(メモなどの代償手段の提案)」**という前向きな話し合いのきっかけ(心理教育の入り口)として使うのが、最も効果的な活用法です。
難易度調整でMCIから高次脳機能障害まで幅広く対応
対象者の認知機能のレベルに合わせて、柔軟に調整ができるように作っています。
- 課題の難易度(やさしい / ふつう / むずかしい): 間に挟む計算や迷路の難易度を変更できます。記憶の保持が難しい重度の方には、妨害課題なしの「即時再生のみ」のモードも選択可能です。
- ランダム出題の仕組み: 毎回選ばれるアイテム(正解とダミーの引っかけ画像)は完全にランダムでシャッフルされるため、何度でも新鮮な気持ちで取り組めます。画面の「場所」で覚えてしまう空間記憶のズルも防げます。
アルツハイマー型認知症の初期の方や、脳卒中後の記憶障害を持つ方のリハビリテーションに最適です。ぜひ、日々の臨床やご自宅での自主トレツールとして、タブレットやスマホにブックマークしてご活用ください!ルとして、ブックマークしてご活用ください!
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