【無料Webアプリ公開】半側空間無視・失語症の注意誘導をサポートする聴覚リハビリツール「ミミナビ」

導入部分

臨床現場で、**半側空間無視(USN)**の患者様へのアプローチに悩むことはありませんか?

「もっと左を見てください」という言語指示(トップダウンの注意喚起)だけではすぐに右側へ注意が逸れてしまったり、机上課題と実際のADL(歩行や食事など)で乖離が見られたりすることは日常茶飯事です。

そこで今回、視覚ではなく**「聴覚」を利用して、無意識に患側空間への注意を誘導するためのWebアプリ「ミミナビ」**を開発・公開しました。

ブラウザ上で無料で動かせるツールですので、日々の臨床の「ウォーミングアップ」にぜひご活用ください。

🎧 ミミナビ を開く(無料)

※タップすると別画面で全画面表示されます(イヤホン推奨)

「ミミナビ」とは?

「ミミナビ」は、イヤホンやヘッドホンを装着して使用する聴覚的なリハビリ支援ツールです。雨の音や足音(下駄・土の上)などの環境音を再生し、その音源を自動で左右に移動させることができます。

最大の特徴は、ブラウザの標準機能である**Web Audio API(HRTF:頭部伝達関数)**を活用している点です。単なる左右の音量変化ではなく、音の奥行きや反射を計算し、「本当に自分の横や後ろで音が鳴っている」かのようなリアルな立体音響を作り出します。

開発の背景とエビデンス(なぜ「音」なのか?)

聴覚的な空間手がかり(Auditory Spatial Cueing)を用いたリハビリは、近年研究が進んでいる分野です。本アプリは以下の先行研究の知見を参考に設計しています。

  • 即時効果とプライミング: 右半球損傷後のUSN患者に対し、健側(右)から患側(左)へ移動する音楽を10分間聴取させた結果、無視症状に即時的な改善が見られたという報告があります(Cortex誌, 2022年)。
  • HRTFの有用性: スマートフォンを用いた聴覚刺激アプリの開発研究において、HRTF(3D空間音響)を用いた条件は、単なる音量制御よりも「空間のリアリティ」が有意に高く評価されています(JMIR, 2025年)。
  • 安全な付加的アプローチ: 空間的無視に対する非薬物療法のシステマティックレビュー(Cochrane Review, 2021年)において、聴覚的空間手がかりはまだエビデンスレベルが高いとは言えないものの、「有害性はなく、他の介入との併用に適したアプローチ」として位置づけられています。

STならではの工夫:「失語症」への応用機能

今回の「ミミナビ」では、ディレクション(誘導方向)を2つのモードから選択できるようにしました。

  1. 左無視(右半球損傷)モード: 音が【右 ▶ 左】へ移動します。
  2. 右無視・失語症(左半球損傷)モード: 音が【左 ◀ 右】へ移動します。

実はここが、STの臨床現場で最もこだわったポイントです。 失語症の患者様(左半球損傷)は、潜在的に右空間への注意低下(右無視)を合併していることが少なくありません。絵カードの呼称や選択課題で「右側のカードばかり見落とす」というケースです。

言語訓練に入る前に、ミミナビで【左から右への聴覚誘導】をかけることで、右側空間への注意を底上げし、**「純粋な言語機能の評価と訓練」**を行いやすくなるという理論的な一貫性を持たせています。

おすすめの臨床活用法(プライミングとしての使用)

本アプリは、患者様ご自身が画面を見るのではなく、**「セラピストが操作し、患者様にはイヤホンで音を聞いてもらう」**使い方を想定しています。

【具体的なワークフロー】

  1. 導入(10〜15分): 訓練の最初にミミナビを使用し、患側へ向かって移動する環境音(足音など)を聴取してもらいます。
  2. 意識付け: アタック音(下駄の音など)を用いて、「今、どのあたりから音が聞こえますか?」と定位を促します。
  3. 本課題へ移行: 注意が患側へ向きやすくなった状態(ウォームアップ完了後)で、線分抹消課題や失語症の絵カード課題などの机上訓練に入ります。

おわりに

「ミミナビ」は、既存の机上訓練やADL訓練と競合するものではなく、それらの効果を高めるための**「アドオン(追加)ツール」**です。

患者様への負担も少なく、スマホとイヤホンさえあればベッドサイドですぐに実施できます。日々の臨床のちょっとしたスパイスとして、ぜひ一度お試しください!

コメント

タイトルとURLをコピーしました