【無料Webアプリ】視覚+聴覚の強力なボトムアップ!「マルチモーダルOKS訓練」を公開しました

全国の言語聴覚士(ST)や作業療法士(OT)の皆さん、日々の臨床や教材準備、本当にお疲れ様です。

右半球損傷による「半側空間無視(USN)」の患者様に対して、「もっと左を見てくださいね」という言葉(トップダウンの注意誘導)が全く響かず、介入に限界を感じることはありませんか? そんな時に有効なのが、患者様が無意識のうちに左を向いてしまうように仕向ける「ボトムアップ・アプローチ」です。

前回、その代表格である「OKS 視覚誘導訓練アプリ(視覚単品版)」を公開しましたが、臨床を進める中で「もっと強い刺激を入れたい」「左側から話しかけても気づかない『聴覚的な無視』も合併している」と感じるケースがありました。

そこで今回、アプリ第2弾として、視覚刺激に「3D立体音響」を組み合わせた**「マルチモーダルOKS訓練(視覚+聴覚版)」**を新たに開発し、無料公開します!

👁🎧 マルチモーダルOKS訓練 を開く

※タップすると別画面で全画面表示されます(イヤホン・ヘッドホン必須)

OKS(視運動性刺激)の進化版!「マルチモーダル」とは?

そもそもOKS(Optokinetic Stimulation:視運動性刺激)とは、目の前で一定方向に動くパターンを見続けることで、無意識に眼球がその動きを追ってしまう(追視系を刺激する)生理的な反射を利用した訓練です。画面上でターゲットを右から左へ流すことで、患者様の視線を強制的に「無視している左側」へ引っ張り込みます。

今回開発した「マルチモーダル版」は、この画面上の視覚的な動きに加え、**イヤホンから聞こえる雨や風の音が「右耳から入って、左耳へ移動し抜けていく(聴覚的OKS)」**という2つの刺激を同時に提示するツールです。

ブラウザのWeb Audio API(HRTF:頭部伝達関数)という技術を活用し、ただ左右の音量が変わるだけでなく、本当に自分の頭の周りを音がグルッと移動しているようなリアルな3D空間を再現しています。 (※立体音響の効果を最大限に発揮するため、患者様へのヘッドホンやイヤホンの装着が必須となります)

【エビデンス】なぜ視覚だけでなく「聴覚」も足すのか?

「視覚の訓練に、わざわざ音を足す意味はあるの?」と思われるかもしれません。実はこれには、明確な神経心理学的な根拠があります。

USNは「左目が見えていない(盲目)」や「左耳が聞こえない(難聴)」わけではありません。脳の頭頂葉などにある**「空間の優先度マップ(priority map)」の座標軸が、右側に大きくズレてしまっている状態**です。

Kerkhoffら(2012)の研究によると、視覚的なOKSを行うと、視覚性の無視だけでなく「聴覚性の無視」も同時に改善することが分かっています。これは、OKSが個別の感覚器官ではなく、この「感覚に依存しない脳の空間マップそのもの」を直接書き換える力を持っているからです。

つまり、視覚(目で追う)と聴覚(音の移動を感じる)の2つの感覚ルートから同時に「左へ行け!」という強力なボトムアップ刺激(マルチモーダル刺激)を入力することで、視覚単独よりもさらに強力かつスピーディに、脳の空間マップのズレを補正できる可能性があるのです。

現場ですぐ使える!USN改善のための3ステップ導入法

マルチモーダル版は非常に強力な刺激であるため、患者様の状態に合わせて以下のようなステップアップで導入することをおすすめします。

  • ステップ1(初回・重度USN):まずは視覚単品版から 前回の「視覚単品版」を使用し、ターゲットの出現位置を「右寄り」、スピードを「低速」に設定して、眼球がスムーズに追従できるか(不快感やめまいがないか)を確認します。
  • ステップ2(改善時・能動的な注意の引き出し): 「視覚単品版」で刺激位置を中央に戻し、「ターゲットの色が変わったらタップする」などの課題をONにします。受動的に見るだけでなく、能動的(トップダウン)な注意を高めます。
  • ステップ3(さらに刺激を強化):マルチモーダル版の導入 ここで今回の**「マルチモーダル版(イヤホン装着)」**を導入します。中等度〜軽度の患者様で、さらに患側(左側)への注意を強固に定着させたい場合や、「左から話しかけても右を向いてしまう(聴覚性無視)」を合併している場合に非常に有効です。

おわりに

USNのリハビリは、患者様ご本人に「見えていない」という自覚がない(病態失認)ことが多く、言葉での指導だけではセラピストも患者様も疲弊してしまいがちです。

「今日はイヤホンをつけて、リラックスして画面を眺めてみましょうか」 そんな風に、患者様の努力や根性に頼らない「ボトムアップ」の引き出しを一つ持っておくことで、日々の臨床の幅はグッと広がります。

完全無料、インストール不要でお使いいただけますので、ぜひ明日の臨床からタブレットで試してみてください。使ってみたご感想や改善要望などがあれば、ぜひコメント欄でお待ちしています!

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