リハビリ現場で、レーヴン色彩マトリックス検査(RCPM)などの「図形推理」課題を実施する機会は多いですよね。視空間認知や論理的思考、ワーキングメモリを評価する上で非常に優れたツールです。
しかし、現場で評価を行うたびに、こんなジレンマを感じたことはありませんか?
「評価はできるけれど、それを段階的に『訓練』するための教材が少なすぎる……」
市販のパズル本は難易度が急激に上がりすぎたり、スマホアプリはノイズが多すぎて患者さんが混乱してしまったり。リハビリに必要なのは、理不尽な謎解きではなく「着実に思考の階段を登れるツール」のはずです。
そこで、STの視点から「スモールステップで論理的思考を再構築する」ことに特化した、完全無料のWebアプリを開発しました!
まずはぜひ、ご自身でその「解き心地」を体験してみてください。
臨床現場での「図形推理」の悩み…評価はできても訓練教材がない!
日々の臨床や病棟でのリハビリにおいて、レーヴン色彩マトリックス検査(RCPM)などの「図形推理」課題を実施する機会は多いですよね。
図形推理課題は、患者さんの「視覚的な探索能力」「法則性を見つけ出す力」「情報を保持しながら処理するワーキングメモリ」、そして「論理的思考力(遂行機能)」を総合的に評価できる、非常に優れたツールです。
しかし、現場で評価を行うたびに、こんなジレンマを感じたことはありませんか?
「評価はできるけれど、それを『訓練(リハビリ)』するためのちょうど良い課題がない……」
市販の脳トレ本やパズル系のアプリもたくさんあります。しかし、高次脳機能障害の患者さんにとっては難易度が急激に上がりすぎたり、画面の視覚的なノイズ(余計なイラストや時間制限の焦り)が多すぎて課題に集中できず、かえって混乱を招いてしまうことが多々あります。
「解けない理不尽な謎解き」になってしまっては、リハビリとしての効果も、患者さんのモチベーションも下がってしまいますよね。
そこで今回STの視点から「スモールステップ(足場かけ)で着実に論理思考を鍛える」ことに特化した、臨床で本当に使えるアプリを自作しました!
『図形推理トレーニング』の3つのこだわり
今回のアプリは、「いかに挫折させずに、法則を推論する力を引き上げるか」という認知リハビリテーションの原則に徹底的にこだわって設計しています。
1. 挫折させない!全10段階の緻密な「スモールステップ」
知能検査などで使われるマトリックス課題は、最初は簡単でも途中から突然「何をどう見ればいいのかわからない」レベルに跳ね上がることがあります。 本アプリでは、処理する情報(変数)を1つずつ段階的に増やしていく、全10レベルの緻密な階段を用意しました。
- Lv1:形のみ(繰り返し)(色は固定で、形だけが変化。一番基礎のルール)
- Lv2:形+色(繰り返し)(縦と横で、形と色が別々に繰り返される)
- Lv3:色の進行変化・入門(形と色が「同じ方向」に、淡い→濃いと段階的に変化)
- Lv4:形繰り返し+色の進行変化(形は繰り返し、色は段階変化と別の動きをする)
- Lv5〜6:形の分散(ラテン方陣)(各行・各列に形が1回ずつ登場する概念を導入)
- Lv7:分散+進行変化(混合)(複数のルールが混ざり、自己判断が求められる)
- Lv8〜9:3属性完全分散(「形・色・数」の3つの要素すべてが分散する最高難度の推論)
- Lv10:論理演算(OR / AND / XOR)(図形同士の「足し算」「掛け算」「引き算」に挑戦)
いきなり難しい「分散」や「論理演算」をやらせるのではなく、「入門」のハーフステップを細かく挟んでいます。これにより、患者さんが「どこに注目すればいいのかわからない」とパニックになるのを防ぎます。
2. メタ認知を促す「言語化フィードバック」
ただ「正解(マル)」「不正解(バツ)」を出すだけでは、訓練にはなりません。 このアプリの最大のこだわりは、回答後に「頭の中で行うべき推論のプロセス」を言語化して画面に表示する点です。
例えば、間違えてしまったあとに、
💡 行3:楕円・長方形 → 欠けている形「三角」 列3:楕円・長方形 → 欠けている形「三角」(一致) → 正解「三角/赤」
といったように、プログラムが具体的な図形名をテキストで書き出し、論理的な思考の筋道を示してくれます。 このフィードバックにより、患者さん自身が「なるほど、縦と横で足りないものを探せばよかったのか」と自己修正(メタ認知)しやすくなり、ただの直感頼みから「論理的思考」の定着へと繋げることができます。
3. モチベーションを保つ「自動難易度調整」と「前回比較」
日々のリハビリで使いやすいよう、「自動調整モード」を標準搭載しています。3問連続正解するとレベルが上がり、3問連続不正解でレベルが下がる仕組みです。患者さんのその日の調子に合わせて、常に「少し頑張れば解ける」最適な難易度を提供します。
また、訓練終了後には「前回セッションとの比較」が表示されます。「正解率が+5%アップ!」「最高到達レベルが上がった!」といった成長が可視化されるため、日々のモチベーションアップに繋がります。(もちろん、STの方向けに成績データのCSVダウンロードも可能です!)
臨床・ご自宅での「おすすめの使い方」
🏥 臨床現場(ベッドサイドやリハビリ室)でのセッションに タブレットを使用し、STと患者さんが一緒に画面を見ながら取り組むのがおすすめです。「この列は横にどう変わっているかな?」「縦にはどうかな?」と声かけをし、正解後のフィードバック画面を一緒に読み上げながら言語化を促すことで、リハビリ効果が飛躍的に高まります。
🏠 病棟やご自宅での自主トレーニングに スマホでも見やすく、誤操作しにくい大画面のボタンUIに設計しています。病棟での空き時間や、ご自宅での毎日の自主トレ課題としても最適です。結果が残るため、次回の訪問時や外来時に「昨日はレベル7までいけましたね!」と一緒に振り返ることができます。
※ご注意:本アプリはあくまで「訓練・トレーニング」を目的としたものであり、認知機能の「診断」を行うものではありません。
おわりに
私自身、忙しい臨床業務の中で「評価のための検査キットはあるのに、それを段階的に訓練できるツールが少ない…」という悩みをずっと抱えていました。 「ないなら、今の現場で本当に使えるものを自分で作ってしまおう!」と思い立ち、今回このような形で公開することができました。
まずはSTの皆様ご自身でプレイしてみて、スモールステップの心地よさや、メタ認知を促すフィードバックの細かさをぜひ体験してみてください!
今後も、現場のSTや当事者・ご家族の役に立つツールを開発し、このブログで無料公開していく予定です。 使ってみた感想や「こんな機能が欲しい」「うちの患者さんにはここが難しかった」といったご要望がありましたら、ぜひコメント欄やお問い合わせフォームから教えてくださいね。皆様からの生の声が、次なるより良いツール開発の原動力になります!
日々のリハビリテーションが、少しでも楽しく、実りあるものになりますように。


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